フランスの「皇帝ペンギン」が大成功

フランスのドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」(2005年)が、アメリカで大成功した。これが、ハリウッドの映画業界をドキュメンタリーへと突き動かす要因となった。

興行収入137億円。製作費の15倍

本作は、南極に生息する皇帝ペンギンの生態を丹念にとらえた。製作費は約800万ドル(約9億1000万円)だった。米だけで7743万ドル(約88億円)の興行収入を記録した。全世界では、1億2000万ドル(約137億円)を稼いだ。つまり、製作費の約15倍に売り上げとなった。

2005年度のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞も獲得した。DVDも好調な売り上げを記録した。

出典:https://eigaz.net/documentary/

「不都合な真実」

「不都合な真実」は、気候変動(温暖化)対策を訴えるアル・ゴア元米大統領候補(民主党)の講演活動の記録だ。アル・ゴア氏が、気候変動の恐ろしさを抱負なデータを挙げて訴える。

ゴア氏は「一瞬だけ大統領になった」と自己紹介して聴衆の笑いを誘い、「北極は50~70年後に消滅する」など、数々の驚愕(きょうがく)のリポートを紹介する。

アカデミー賞で2冠受賞

アカデミー賞では、長編ドキュメンタリー賞と主題歌賞の2部門を受賞した。

そして、国内産業に配慮し気候変動対策に消極姿勢のブッシュ政権を、「不都合な真実」から目を背けようとしている、と厳しく批判する。

映画は2006年5月に米国で公開され、興行収入は全米7位になった。ドキュメンタリー映画としては大きなヒットとなった。その要因については「ブッシュ政権の政策について、あらためて考えようとする意識があるのではないか」(宣伝担当)との見方もあった。

「エンロン~巨大企業はいかにして崩壊したのか?~」

「エンロン~巨大企業はいかにして崩壊したのか?~」は、売上高全米7位の巨大企業エンロンが2001年、不正会計疑惑を報じられ、破たんするまでの内幕を描いた。

映画では、規制緩和されたカリフォルニアで意図的に停電を起こし、電力価格を急騰させるなど、エンロンの強引な手法を描いている。

ブッシュ政権への献金

エンロンのケン・レイ元会長はブッシュ家と懇意にしており、エンロンは大統領選でもブッシュ陣営に献金している。

一方のブッシュ政権も、カリフォルニアの緊急事態に際して、「あくまで州の問題」と決めつけて介入しようとしない。エンロンの立場を気遣う政権側の姿勢が見え隠れする。

21世紀の優れたドキュメンタリー映画の例

映画タイトル 概要
「ボウリング・フォー・コロンバイン」
(2002年)
マイケル・ムーア監督が銃社会の現実を描いた。
「華氏911」
(2004年)
マイケル・ムーア監督が、ブッシュ政権下の米中枢同時テロやイラク戦争を取り上げた。
「誰が電気自動車を殺したか?」
(2006年)
米ゼネラル・モーターズ(GM)が開発した電気自動車が様々な業界の圧力で姿を消すまでの過程を暴く。
「ペレを買った男」
(2007年)
ブラジルのペレ選手が所属し、1970年代から1980年代中ごろまで大活躍したプロサッカー・チーム「ニューヨーク・コスモス」の栄光の歴史と金権体質にまみれた暗部を描く「ワンス・イン・ア・ライフタイム」など。
「ワードプレイ」
(2006年)
ニューヨーク・タイムズ紙のクロスワード欄担当編集者らがクロスワードの歴史などを紹介する。
「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」
(2005年)
カナダ出身の大物建築家、フランク・オーウェン・ゲーリーの作品や仕事ぶりを紹介。